

フォンテンヌブローの森はパリ郊外にあります。2万5000ヘクタールの広さはフランス国内でも第2番目です。フランス人の友人が狩りに行くと言うので一緒に出かけました。森の中には16世紀にフランソワ1世が改築した美しい宮殿がありますが、私たちが行ったのは森の真ん中の待ち合わせ場所です。
気温は3度、あいにくの雨でしたが、そこには深緑の狩りの正装をした人たちが集まっていて、挨拶を交わしていました。友人がみんなに紹介してくれました。幾人かのブルトン人(ブルターニュに暮らすケルトの末裔)もいて、しばしブルターニュのことで話が盛り上がりました。フォンテンヌブロー宮殿や近くのバルビゾン村はたくさんの日本人が訪れるのですが、狩りは観光用に公開されていませんし、深い森の中は一般車両通行禁止ですから、さすがに日本人はいませんでした。
猟犬がはなたれ、馬に乗った狩人たちがあらかじめ打ち合わせした方向にそれぞれ進みます。この狩りは獲物を猟犬によって追い詰めるもので、銃は用いません。私は四輪駆動のジープに乗せてもらい出発しました。あらかじめ森の奥に先回りして、猟犬の来るのを待つのです。車止めに使用されている木製の柵の鍵を開け、獣道を抜けてゆきます。木の枝が車体をかすめようと、道がぬかるんでいようとおかまいなしに疾走します。パリダカールラリーを思わせる荒々しい運転です。ところどころでエンジンを切り、かすかに聞こえる猟犬の声を手がかりに、方向を決めるのです。馬車や自転車で追走する人たちもいます。
落ち葉がかさかさ音を立てるだけで、苔むす大木が立ち並ぶ森の中は静寂に満ちています。1時間ほどたった頃、大きな角を持ったりっぱな鹿がすぐ側を横切りました。合図の角笛がこだまします。猟犬が鹿を追って森を駆け抜けました。それから約5時間、森の中をゆきつ戻りつ、奔走したのですが、何しろ起伏のある森ですから、猟犬の姿を確認できたのは3回だけでした。それでも他の野生の鹿を何頭も見かけました。狩りは日没前に終わりです。この日は鹿を見失って収穫なしに終わりました。
馬から下りた人たちと持ち寄ったパン、チーズ、パテなどを食べ、パリに戻りました。きらびやかな光の都のすぐ側に広大な森があるのです。狩りには女性も参加していました。「森の中を馬で走るのが好きだから、ほとんど毎週、雨でも来るのよ」と言います。四季それぞれに異なる美しさがありますから、新緑のころもう一度森に行ってみたいものです。
参考資料
国立民族学博物館:ビデオテーク・プログラムフランスの鹿狩り 伝統的追走狩猟
内容についてはラブリー写字室の写字生の日記に書かれています。
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