映画 HIROSHIMA MON AMOUR
第二次大戦からすでに半世紀以上。記憶は歳月とともに薄れつつある。とても有名な映画なので題名は知っていたが、何しろ古い作品なので、見たことがなかった。
HIROSIMA MON AMOUR1959 モノクロ 91分 フランス
アラン・レネ監督、邦題 「24時間の情事」
3月1日、朝8時から、作家Marguerite Duras(マルグリット・デュラス)の講義をレンヌ第二大学で聴いていた。小説La pluie d'été (夏の雨) 1990 という作品で登校拒否の少年が世界の創造について語りはじめるという部分を読んだ。ついで脚本HIROSHIMA MON AMOUR
(広島、我が愛) 1959 の説明があった。日本人の建築家と、映画の撮影で広島に来たフランス人女性との愛情を描いた作品である。「世界の終わりから再構築へ」というのが今日のテーマだった。
教師が広島を撮った有名な写真を知っているかと問いかける。「身体は消滅したが、人間の影だけが焼きついて残ったんだ」。私以外、誰も知らなかった。学生たちはみんな20代前半だ。私よりずっと若い。広島に原爆が投下されたことは知識として知っているだけである。
それから映画の冒頭をビデオで見た。ざらざらした質感の不思議な形態がやがて裸で抱き合っている男女の肉体らしいとわかってくる。画面は原爆投下直後の広島の映像になる。焼け爛れた皮膚。さまよう人々。原爆資料館の映像。そして冒頭の男女の姿が繰り返しはさみこまれる。
強烈な映像だ。でも日本人である私は、度々ドキュメンタリー映像を見ていたし、ナレーションの異様さと男の背中を上下する女の手に邪魔されて、思いのほか冷静に見ていられた。私は前のほうに座っていたのだが、しばらくすると後ろの方から鼻をすすり上げる音が聞こえてきた。ビデオを見たのは、時間にすれば15-20分くらいだったろうか。何人もの、フランス人学生が泣いている。驚いた。きっと彼らにとっては、衝撃だったのだろう。
ビデオをとめて討論にうつった。やはり映像の抽象性が気にかかるという意見があった。言葉の様々な解釈について。ある学生が質問した。「映像はすべて本物か?わざとらしさがある」。教師は「よくわからない」と答えた。私は「これまでに他の映像を見たが、実情はこの映像よりひどかったと思う」と言った。教師はしばらく黙っていたが、そのあと声がかすれていた。
講義がおわって、何か話しかけようかと思ったが、私自身映画を全編見ていないので、感想の述べようもない。見終わったら、自分の意見を話してみたいと思う。それにしても、映画の中の日本は、今とあまりにかけ離れていて、遠い昔の記憶の残照のようだった。今日は地球の裏側から、日本のことを考えた。
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