ベリー公のいとも優雅なる時祷書をめぐる一考察
外国語を翻訳するというのは、大変な仕事である。Les Très Riches Heures du Duc de Berryという写本のタイトルを日本語にどう訳せばよいのだろう。このタイトルがどのように日本語訳されているか、調べて書かれているおもしろい記事がある。ラブリー写字室の「ベリー公問題にもの申~す!」である。これによると、日本語訳にたくさんのバリエーションがあることがわかる。
「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」 90件
「ベリー侯のいとも豪華なる時祷書」 1件
「ベリー公のいとも豪華な時祷書」 9件
「ベリー侯のいとも豪華な時祷書」 3件
「ベリー侯の豪華時祷書」 6件
まず、爵位が異なっている。広辞苑第4版によると、「爵」というのは「明治憲法下で、勅旨によって授与された栄典の一。華族・朝鮮貴族の世襲的階級で、公・侯・伯・子・男の五等」と記されている。Le petit Robert辞書をみると、フランスではprince, duc, marquis, comte, vicomte, baron(1817年8月25日付けの条例)である。le princeは大公と訳されることが多いようだ。le Ducはle Duché公国の君主を指す。従ってle Duc de Berryはベリー公が正しいだろう。
次いでRicheという言葉だが、ロワイヤル仏和中辞典には「金持ちの、裕福な、高価な、豪華な、・・・に富んだ、・・・の豊富な、豊かな」という意味が並んでいる。ようするに素晴らしい内容だといいたいわけだ。あとは、日本語のニュアンスの問題だ。私は饗庭孝男さんの訳語を使用させていただきベリー公のいとも優雅なる時祷書と書いた。この語が、一番この写本のあでやかさを表していると感じたからだ。だが、これだけ日本語訳が異なっていると、実際に文献を検索する際、重要な情報を見落とす可能性もあるのでやっかいだ。ためしにAmazonで「ベリー公」と検索してみるとベリー公のいとも美しき時祷書というタイトルになっていた。まだまだ違う日本語訳があるのかもしれない。
前述のラブリー写字室内にあるヨーロッパ彩色写本図鑑には97冊の写本が紹介されている。またベネットさんが創作した日本語による彩飾写本「書猟の季節」は奇想天外なストーリーで挿絵も美しい。
追加情報あり。さらに日本語訳が異なる本が存在する。
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