鉄の教会
パリの教会といえば誰もがシテ島にあるノートルダム寺院やサントシャペルを思いうかべるだろう。モンマルトルには真っ白なサクレクール寺院がある。内部に描かれたキリストが大きく手を広げた姿は息を呑むほどだ。その隣にはサンピエール教会がひっそり立っている。観光客でにぎわうテアトル広場で絵描きたちの絵を見て、すぐ近くにあるダリ美術館に行き、ゆっくり坂を下りるとアベス広場に出る。アール・ヌーヴォー様式の優雅な曲線を描くメトロの入り口をじっくりながめたら、広場の周囲を見渡してほしい。
するとこの外観が目にはいるはずだ。何と、これは教会なのだ。Eglise Saint-Jean-de-Montmartreサンジャン・ドゥ・モンマルトル教会である。建築家Anatole de Baudotアナトール・ドゥ・ボドが1894年から1904年にかけて建てたもので、はじめて鉄筋コンクリートを用いたネオ・ゴチック教会である。私はドアのうつった写真を一枚だけたずさえてここを訪ねたのだが、実際にそのドアの前にたつと、細かな細工がほどこされており明るい日差しの下ではあまり重い印象はなかった。
教会内部の柱もシャンデリアもすべて鉄製なのだが、ロマネスク教会のようなアーチのおかげで鉄の硬質なイメージがやわらげられている。それでも石とは質感が異なり、教会というより巨大な倉庫といった感じがした。しかし想像よりもデザイン、仕事の緻密さともにすぐれていて、「鉄の刺繍をほどこした」と評されたエッフェル塔(1889年完成)と並び、鉄の時代の代表的建築物といえよう。教会内には手作りのパネルがたくさん並んでいて、建築家の経歴や教会の説明などが詳しく書かれていた。
建築としては有名でも実際の祈りの場としてはどうなのだろうか。いごこちのよさという点ではやはり慣れ親しんだ石づくりの教会がまさるように感じたが、信仰の厚い人ならそんなことは関係ないのだろうか。
参考資料
この教会についての記述はないが、パリの現代建築についてはこの本が写真が豊富で見ていて楽しい。
パリの奇跡―都市と建築の最新案内 松葉一清 1998 朝日文庫
パリの奇跡―メディアとしての建築 松葉一清 1990 講談社現代新書
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コメント
三紗さん、こんにちは。
サンジャン・ドゥ・モンマルトル教会の存在を初めて知りました。教会内部の柱もシャンデリアもすべて鉄製だなんて、不思議な空間のような気がします。やはり石造りの教会の方がしっくりくる気がしますが、信仰の厚い方には確かに関係ないことなのかもしれませんね。今度パリを訪れたら、こちらの教会にも足を伸ばしてみたいと思います。
-追伸-
リンクありがとうございました。
私もリンクさせて頂きましたので、これからもよろしくお願いいたします。
投稿: petite_nori | 2004.11.01 11:34
petite_noriさん。こんにちは。
私が行きたいという場所はフランス人の友人も「何? どこ?」というところが多いんです。
ひそかに行こうと思っているのが、ジル・ドゥ・レ(青ひげ)のお城。前を通ったことはあるのですがその時は時間がありませんでした。
投稿: 市絛 三紗 | 2004.11.01 17:12
三紗さんの行きたいと思われる場所は、フランス人のお友達でも??なところが多い、隠れ名所なのですね☆
ジル・ドゥ・レ(青ひげ)のお城・・・は、興味津々です。ぜひ、ガイドブックにも載っていない隠れ名所を、これからもいろいろ紹介してくださいね。とっても楽しみにしています♪
投稿: petite_nori | 2004.11.02 14:58
petite_noriさん。こんにちは。
私の知っているジル・ドゥ・レの城は2ケ所あって、1つは廃墟、もうひとつは入場料をはらって見学できます。場所はちょっと離れていますが。
投稿: 市絛 三紗 | 2004.11.02 15:28