ところが、このことが大きな波紋を広げているのだ。フランスで養子を迎えることの大変さは12月20日に子供は宝で書いたとおりだが養子縁組を望む夫婦が多いので、ベトナムでは実現するまでには最低3年かかるのだそうだ。それなのに彼らはわずか1年ほどしか待っていない。しかも普通は両親が45歳以下であることが条件となっている。ジョニーはどうやって条件をクリアし、こんなに早く実現することができたのか?
ジョニー・アリデーは押しも押されぬ大スター。彼のコンサートにはよくシラク大統領の姿がある。また何度目の結婚時か忘れたが結婚の証人になったのはサルコジ外相夫妻だったというふうに非常に交際が広い。今回のジョニーの養子縁組に協力したのは、シラク大統領夫妻だった。しかもそれは大統領が昨年10月にベトナムを公式訪問したさいに、書類をベトナムの法務大臣に直接手渡し、早期実現を取り計らってくれるよう依頼したというのだ。この事実は昨年10月18日付けでL'Express に載っている。
これを聞いて憤慨しているのが、ずっと養子をもらうために順番待ちをしている人たちである。リヨンで海外から養子をもらった夫婦、また順番を首を長くしてずっと待っている何組もの夫婦にあった。その切なる願いに心を打たれた。それなのにジョニーは鶴の一声で、順番待ちリストを数千人分追い越すことができたのだ。しかも、ジョニーはいくらとは表面にはでてこないが、普通より高額の費用を支払ったのだそうだ。もしかすると、これは彼の優しさや感謝の表れなのかもしれない。だが彼のようなやり方を他の金持ちが真似たら、費用が高くなることは明らかだという。
これまでほとんどマスコミに姿を現さなかった奥さんラティシアが昨年からテレビに生出演するようになった背景には、母親になるという確固たる自信が芽生えていたからなのだろう。もちろん二人にとっても大きな人生の決断だったことは間違いないし、よかったねといってあげたい。彼がベトナムまで子供を迎えに行ってわが子をしっかりと抱きしめている写真があちこちに氾濫している。しかしそれを見て悲しくて涙にくれた人たちがたくさんいると聞き、やるせない思いがした。
以前テレビで中国の養子斡旋業者のドキュメンタリーをみたことがある。りっぱな会社であまりにすべてが組織化されていることに違和感があった。中国から養子に行く国で一番多いのがアメリカ、次いでフランスだそうだ。リヨンの友達の説明によると、まるで団体旅行のように、養子を望む人たちが同じホテルに泊まり、会社からの大型バスに乗って子供を見に行き、「私はあの子がいい」と外見だけで選ぶのだそうだ。病気があるかどうか、どんな両親から生まれたのかなどの基本データすら与えられないのだという。もちろんこれは極端な例だろうが、会社によって格差が激しく、どうしても子供が欲しいなら、それでもいいと考える人たちもいるという。子供は宝である。自分の家族を持ちたいという気持ちは痛いほどよくわかる。でも、子供は価格をつけて売買する商品ではないはずだ。
ところで下の本にシラク大統領が養子をもらっていると次のように書かれているのだが、いろんな人にたずねてみても誰もそんな話は聞いたことがないというのである。
シラクは思想やイデオロギーにあまり神経質ではなく、実務家タイプの政治家であり、親分肌の人情家であると言われる。ドゴール空港で泣いていたヴェトナム難民の娘を養女として迎えてもいる。 フランス現代史
フランス現代史―英雄の時代から保革共存へ 渡辺 啓貴著 中公新書 1998
フランス政治外交論を専門とされている渡邊啓貴さんが書いていることなので間違いはないはずだが、フランス人が誰も知らないというのもおかしなことだ。こんな美談をマスコミが報道しないはずないと思うのだが、個人のプライバシーは守られているということなのだろうか。どなたかご存知ですか。