暴動の深い傷跡
すでに暴動は下火になっているものの、まだすっかりおさまったわけではなく、夜間外出禁止令などを発令できる非常事態法の適用が3カ月延長された。テレビでは数週間どんな暴動もおきていなかった地域でも放火事件があったことを伝えている。自分の父親や近所にすむ顔見知りの車を燃やした少年もいる。これまでの信頼関係がずたずたになってしまったのだ。これで暴動はしずまったとしても、その傷跡はフランスじゅうにしっかりと刻み込まれてしまった。
月曜日、火曜日とナントに行ってきた。レンヌのSNCFの駅にはびっくりするほどたくさんの職員がいて、ひとりひとりの切符をチェックしていた。こんなことは今まで経験がない。ナントでは町の中心部で放火があったそうで、住民のショックは大きかったようだ。夜その横を車で通ったのだが、高級ブティックが立ち並ぶすぐそばの広場で車に火がつけられたのだそうだ。普通なら夜もにぎやかな通りもあまり人が歩いていない。人々は夜外出しなくなったのだ。
住民たちはパトカーのサイレンが聞こえると敏感に反応してしまうし、警官や消防士たちは疲労困憊している。毎日続くサイレンの音にしらずしらず気分がいらだつ。その矛先はやはり移民たちに向いてしまう。できるならばかかわりたくないと心の底では考えていたのだろうが、それを誰もが公然と口にするようになった。
夕べは14-15世紀にわたる英仏百年戦争の歴史を読んでいた。これで終わりと思ってもまた戦闘が再開される。だが最終的にイギリスは自分の国に引き上げた。数世代前からフランスに住んでいる移民の子供たちにとってはフランスが祖国なのだ。どこにも帰る場所はない。
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コメント
こんにちは。
SNCFの切符の検査というのは暴動とは関係なく以前から色んな駅で行われています。
これは切符を買わずに列車の乗り込んでしまう人が時々いるので、そのような状況をホ-ムに出る前に対処しようというのが一つ、又そうする事で事前に乗客者が危険なもの、もしくは規制より大きなものを持ち込んだりしないかというチェックでもあります。
SNCF関係の人からの話です。
投稿: じゃむ | 2005.11.18 02:12
じゃむさん。こんばんは。
パリのモンパルナス駅からレンヌ行きのTGVに乗るときはいつもチェックがあります。でも今回は職員が50人くらいが一度に固まって立っていて、とてもびっくりしました。
ナントでは駅の構内で警官がスタンドをつくり、警官の仕事を説明していました。こんな光景もはじめて見ました。
投稿: 市絛 三紗 | 2005.11.18 06:26
こんにちは。
暴動も沈静化しつつあるようで、少しほっとしています。問題は決して解決したわけではないのですが。
>数世代前からフランスに住んでいる移民の子供たちにとってはフランスが祖国なのだ。どこにも帰る場所はない。
その通りです。フランスは彼らにとって真に祖国になっているのでしょうか。「故郷を失った人たち」「家族(民族)離散」Heimatloss, diasporaといわれる問題は、考えると実に重いですね。
投稿: 桑原靖夫 | 2005.11.19 00:07
こんばんは。
問題はそこなんですよね。フランスに生まれ、国籍をもっているのに、自分の住所と名前を正直に書くと仕事をもらえない。「自分はいったい誰なんだ。フランス人なんだから、政府が面倒みる義務がある」とつながるのです。
でもおじいちゃんの国に帰ってももう親類なんていないし、追放されたら四面楚歌です。悲しいですよね。
投稿: 市絛 三紗 | 2005.11.19 00:25
こんにちは。
駅での検札はモンパルナス駅からレンヌ行きに限らず色んなところでやっていますし、地下鉄でも検札員が大勢いる事も良くありますよ。空港でも、そのような状況は見られます。
それから、警官達も自分達の仕事のイメ-ジアップを図りたいんでしょうね。
その様なわけで、(妙な)ポスタ-を作ってみたりしているわけですよ。(笑)
投稿: じゃむ | 2005.11.19 22:48
じゃむさん。こんにちは。
警官は大変だったと思います。自分の家族のことも心配なのに仕事だからと毎晩暴徒とにらみっこするのですから。
相手は何でも投げるし、銃を持っていることさえあり、本気で向かってくるわけです。自分の同僚が怪我をしてゆくのを横目で眺めていなければなりません。でも警官たちが手を出すと処分される。(あたりまえですけれど)。この騒動がおさまれば、短期休暇でもあげたいです。
投稿: 市絛 三紗 | 2005.11.20 00:07