
今年は楽しいことだけ書こうと思っていた。でもそういうわけにもいかないようだ。いったん<ゆれるフランス>というメルマガをやめたのに、振り返ってみればメルマガを発行している時とあまり変わらない分量を書いていた。フランス全土に広がった暴動がおさまってからも日本には報道されないだけでレンヌではあらたな事件が起きている。
いやこれはレンヌだけではない。フランス各地でレンヌと同様の些細なこと(機動隊との衝突、水砲や催涙弾の使用、車の放火)はたびたび起きている。1月21日、土曜日の地方紙Ouest Franceに載っていたカナビス関連記事が気にかかるので書き残すことにした。
先週木曜日の午後11時30分から金曜日の明け方3時まで一般道路で行われた取り締まりで、車の中から30キロのcannabisカナビス(大麻)樹脂が押収された。これはPloërmel警察の押収レコードを塗り替えた。車には2人の人間が乗っていたのだが、取締りに気づいて徒歩で逃走し捕まっていない。30キロのカナビスの販売価格150000€(約2100万円)になるそうだ。
大麻には習慣性はないし、日本の場合は第二次大戦後に取り締まられるようになったので、大麻の規制を撤廃してもいいという意見があることも知っている。「大麻とは、何か?」を参照のこと。アルコールにしても適度に飲んでいる限りには何の問題もない。夏に冷えたビールを飲んだり、チーズと一緒にワインを飲むのは人生の喜びのひとつでもある。
だが、大麻を毎日吸うという人は、ほとんどほかの麻薬にも手を出している。アルコールを飲む量も生半可ではない。その費用を捻出するために通行人に金をせびったり、また万引きや軽犯罪が伴うケースが多すぎるのだ。「すみません。ビールを飲む小銭を下さいませんか」と何度呼び止められたかわからない。そう言う若者たちはすでに相当量を飲んでいることが見た目にもわかるのだから。
フランスはヨーロッパで最もカナビスの消費が多く、ブルターニュはフランス国内でNo.1というありがたくない結果がある。上に挙げた地図は17歳以下の地域別カナビス使用者数なのだが、これを見れば一目瞭然だ。低年齢化が近年非常に問題となっている。国内には18歳以下で28万人のカナビス常用者がいるという。大人なら制御も可能だろうが13-14歳の思春期の若者たちが常用している現状は日本人の眼から見ると、やはり異常としか思えない。野外でスポーツをしたほうが健康に良いに違いないからだ。
これまでは「ごく一部の若者だけだ」とか「好奇心が満たされたら自然とやめるようになる」とか楽観視されることが多かった。だが現実にアルコールとカナビスを大量に摂取し、車を運転するものだから、若者の交通事故が急増している。こちらもレコードが塗り替えられている。日本では想像もできないほど、乱用が目立つのである。「ただ何となく、ほかにおもしろいこともないから」カナビスにおぼれる思春期の若者達。貧しくてもキラキラした眼差しを持つアジアやアフリカの子供たちと、どうしてこんなに隔たりが出来てしまったのだろうか。
参考資料
「大麻とは、何か?」 Perfect TV モンド21 1996年12月放送
心にはたらく薬たち―精神世界を拡げるために
小林 司 (著) 人文書院 1993
www.drogues.gouv.fr フランス 麻薬の現状
Dangers du cannabis : informer le monde scolaire 24 janvier 2006 Le Figaro