
1968年「5月革命」以来、最も大規模な学生運動に発展し、まだまだ集結しそうにない反CPE抗議のデモ、大学封鎖。全国で最初に大学を封鎖したのはレンヌ第二大学だったのだが、いったいなぜこのような運動が起きたのだろう。
これまで単にCPE(le contrat première embauche初期雇用契約)と書いてきたが、 4月2日付けで公布、即日施行されたのはl'égalité des chances「機会平等法」である。CPEについてはシラク大統領の演説を踏まえて法改正まで運用を凍結する異例の対応をとることになった。いきなり登場した「機会平等法」、これだけではさっぱりわからない。
私自身法律をうまく説明できない。そこで検索したら在日フランス大使館のなかに機会平等法という項目があった。これをさらに簡単にまとめてみた。フランス語の原文はAssemblée nationale国民議会のEgalité des chancesに載っている。
1)フランスの若者が置かれている状況、特に雇用状況は改善されなければならない。
若者の高い失業率を下げる施策が必要。
2)機会平等法案には、数十年来続いているこの状況に対する具体的な解決策が盛り込まれている。
教育と雇用による解決、差別対策、家族および市町村における権限の回復、ボランティア市民サービスなど。
3)この法律の鍵を握る要素に、初期雇用計画(CPE)がある。
従業員20人以上、雇用対象は26歳未満
CPEは無期雇用契約である。
CPE給与所得者は多くの権利を得る。
2年の試用期間中、契約の解消は簡略化されるが、労働法は守られる。
4)ヨーロッパの主要国は同等の仕組みを備えている、もしくは導入を検討している。
たとえばドイツでは年齢にかかわらず、新契約には24カ月の試用期間を設けている。
マオ猫日記の
フランス全土でCPE反対デモにさらに詳しい解説がある。機会平等法についてはたいていの人が反対してはいないのだが、その中に含まれるCPE(初期雇用契約)が争点となっているのである。反CPEの運動で特に問題となっていたのは「2年間の試用期間内は理由をつげずに解雇できる」ということだったがシラク大統領は、「試用期間を2年から1年に短縮すること」と「解雇の理由を本人に通知すること」を修正することを演説の中で明らかにしている。
4月4日に反CPEのデモに参加した人たちの多くは「CPEそのものを機会平等法から省くことが必要だ」と主張している。フランスの労働条件はいったいどうなのか。全国統一ストライキを決行してまで、CPEはどうしても止めさせなければならない悪法なのだろうか。フランスっての2つのエントリー新卒雇用契約(CPE)とCPE(新卒/初任雇用契約)の内容、さらに平均給与額の裏側を読めば、フランスの労働者は日本より待遇がいいことがわかるだろう。
しかしながら、これらの権利はこれまでフランスの労働者たちが戦って勝ち取ってきたものである。フランスでは日本のように企業にはいってから仕事を覚えるのではなく、先に自分が働きたい職種でstageスタージュ(ただ、もしくは低賃金)をする。なぜなら就職にあたり「経験があるのか」ということが重視されるからである。日本人なら「新卒なのに経験なんてないにきまっている」と答えるのではないか。でもそれでは採用されないのだ。そのため大学生は夏休みの間、スタージュをしてそれを自分の経歴に記入する。大学を出ても就職できない若者たちは、短期契約や臨時雇いのような職を転々としている現状もある。
CPEのような試用期間を設けることによって確かにみかけの失業率は減少するだろう。だが、26歳まである日突然理由もなく失業するというのでは人生設計などたてられない。CPEに反対する人は「なぜ26歳までと定めなければならないのか。若者を差別し使い捨てにするつもりか」と怒っているのである。さらにこれが認められれば、また別の法律が出来て既存の権利をうばわれるのではないかという不安もある。
昨年8月(みんながバカンスに出かけていて注目されない時期)にはCNE(Contrat Nouvelle Embauche)が組合との協議も国会での討論もなく制定されていた。こちらは従業員20人未満の企業を対象としたものである。ドビルパン首相がCPE案を発表したのは1月16日だった。当初注目をあつめていなかったのだが、これが国民議会で強硬に採決された2月9日から世論も反対が増加していった。
写真は4月4日、レンヌでの30000人の反CPEデモの様子である。関連バックナンバーはこちらから。