フランスの労働法制
社会経済学者のFlorence Lefresneフロランス・ルフレーヌ氏がLe monde Diplomatiqueに記事を書いているが、それが日本語に翻訳されている。不安定雇用にむしばまれる労働法制 (ル・モンド・ディプロマティーク日本語)
「無期限の雇用契約が、安定雇用という規範を体現するものとなるまでには、数度にわたるステップアップが必要とされた。現行法上の無期限契約の規定は、労使関係の長い歴史の末に到達した成果である」が「ここ最近、新規採用契約(CNE)や初採用契約(CPE)といった措置が打ち出されている。この措置は、失業者のうち特定の層が対象にされているが、そのじつ労働法そのものに対する侵害にほかならない」と述べている。
ところで、先日リヨンのオペラ座所属のテノール歌手、成田さんに聞いた話では、芸術や音楽関係に従事している人たち(地方自治体が雇用主の場合)は現在終身雇用ではないということだ。成田さんの場合は最長が3年のCDD(Le contrat à durée déterminée)契約。ただ、欧州議会の決定によって、公務員の6年を超えるCDDの更新は違法とみなされるので、現在、規定の見直し中だとか。
10年ほど前に法律が変更されたのだが、法律が施行される以前の雇用契約はそのまま継続されているので、短期契約と終身雇用の人が同じ職場で働いているという複雑な形態だそうだ。ただパリのバスティーユは国立歌劇場なのに雇用主が自治体ではなくアソシエーションなので終身雇用が適応されるらしい。いずれにしても劇場によって3ヶ月~1年の試用期間があり、最初の契約は1年が最長となっている。
終身雇用ではなくなった理由を「楽器(身体)は日々変化するものなので、ずっと同じ条件で雇うわけにはいかないと言うのが、お役所の言い分でしょうかね」と成田さんは推測しているが、ほかの職業でもこのような例があるのかはわからない。
また年金制度については短絡的思考…フランス新雇用政策の報道を巡ってに的をえた解説がある。
フランスの年金制度は「ベースとなる年金」に加え、「役職や職能別の補助年金」が加わり、老齢年金は「最も給料が高かった時の」50%~80%にまでのぼる。この、最も給料が高かった時代のというのがミソで、退職時の給料という事ではない。 年収1000万だった時代がある人は、60歳以降最高800万円くらいはもらえるという事になる。「老後は子供の世話にならず、悠々自適の年金生活」という夢のような生活はフランスでは現実のものとなっている。
この年金算定のベースとなるのが賃金なので「最低賃金」も高くないと困るわけだ。「賃金が高く、社会保障費の企業負担分が重いため、1人雇うコストとそれに比べる生産性が低いので企業は新規雇用に対し慎重な姿勢をとらざるをえない」から雇い主に自由な解雇権限を与えて雇用を増やそうと考えられたのが新規採用契約(CNE)や初採用契約(CPE)だったのだ。
これらは大学卒のような高学歴の若者たちにとっては不安定な契約であるが、機会平等法に賛成する人たちは「これまで仕事がなかった郊外に住む移民たちや、住所不定で何もしていないような若者にとっては、短期間でも就職できるということは生きる価値を見出すことだ」と評価している。
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コメント
こんにちは。
詳細なレポート、大変参考になりました。これからの大統領選の焦点は、「社会モデル」の内容いかんに絞られましたね。しかし、既得権益の厚い壁があり、前途は多事多難なもとのなりそうです。
投稿: old-dreamer(桑原靖夫) | 2006.04.22 18:43
こんにちは
法律の話題は私の手にはおえません。欧州のことも視野にいれないといけないし、どこまで改革できるのかむずかしいでしょうね。
友人が目撃した話ではレンヌ第二大学の学長は夜の12時すぎに大学のキャンパスをひとりで歩いていたそうです。被害額が大きいので心労でたおれないかと心配しています。
投稿: 市絛 三紗 | 2006.04.22 20:03