ケルティックハープと日本の関わり
ケルティックハープが根強い人気を保っていることは以前ケルティックハープが大人気というエントリーに書いた。今回日経BP社のニュース解説にフランスで70年代から続くケルティックハープのブームを書いたが、取材している途中でLes Harpes Camacカマック・ハープ社の社長(社長自身ハーピストとして長いキャリアをもつ)から思いがけない話を聞いた。ケルティックハープと日本の間には深い関わりがあるという話だ。
中世ヨーロッパではケルティックハープはポピュラーな楽器だったのだが、人々の記憶から忘れ去られていた時代があった。それを現代によみがえらせたのはGeorges Cochevelouジョルジュ・コシュブルーだった。そのハープの音色に魅せられたのが、彼の息子Alan Stivellアラン・スティヴェルで、9才のころにはすでにMaison de Bretagne de Parisでケルティックハープを演奏している。
そのころビートルズの音楽に影響を受けエレキギターを手にした彼は、フランス音楽界に新風を吹き込むことになった。la pop celtique あるいは rock bretonと呼ばれた新しいジャンルをつくったのだ。これがまたたく間にフランスの若者たちを熱狂の渦に巻き込んだ。アイルランドではケルティックハープは国家の紋章。パスポートやユーロコインにも描かれているほど重要なもの。演奏は行われていたものの、奏法はクラシック調に変化していた。アラン・スティヴェルは伝統音楽をブレイス語(ブルターニュに伝わる系の言語)で歌った。そしてケルト音楽の復興をアイルランド、スコットランドなどのケルト文化を継承するほかの地域に呼びかけたのだ。その努力は人々の共感を呼び「ケルティックリバイバル」が巻き起こった。
ところが、フランスにはケルティックハープを作る職人がいなかった。その時ケルティックハープを作っていたのが日本の青山ハープ社だっだ。1897年に創業。当初はヴァイオリン・チェロなどの弦楽器の製造をしていた。その後、青山政雄さんが、ハープの魅力に取り付かれ独自の技術でフォークハープ製造するようになったのである。心のこもったメンテナンスが評判をよび、例えばシンガポールでは90%のシェアを確保しているという。(ハープのマーケティング参照)青山ハープ社がハープを製造していなかったら、ケルティックハープブームの到来は数十年遅れたにちがいない。青山政雄さんの情熱が「ケルティックリバイバル」のひとつの底辺になっているのである。
DinanディナンではRencontres Internationales de Harpe celtique国際ケルティックハープフェスティバルが毎年開催されており、今年は7月11~16日である。Maison de la Harpeハープ博物館で「毎年通ってくるハープ通の日本人がいる」と聞いた。さらに調べてみるとこの方は日本で紫音ハープミュージアムを1年前にオープンしたことがわかった。世界各地のハープ30台と関連の資料を展示公開しているという。
ハープ、この素晴らしい楽器を守り慈しんできたひとりひとりの物語に感動した。不思議な魔力を秘めた音色を生で聴けることをありがたいと思う。ブルターニュ旅行を計画中の方、国際ケルティックハープフェスティバルも予定に入れて下さい。
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コメント
ケルティックハープとCAMACの情報、楽しく読ませていただきました。
神奈川県藤沢市在住のハーピスト八木健一と申します。1998年に、ロワールのCAMACハープ社に滞在した時、当時のCAMAC社の初代社長ガルニエ氏に招待されて、ディノンのケルティックハープフェスティバルに行きました。
それ以来、ディノンに行っていませんが、現在博物館が出来ているとは驚きです。
私自身、CAMAC社のAzilizという楽器を弾いていますが、とても透明な音が出て、大変気に入っています。
投稿: 八木健一 | 2009.05.05 15:39
八木さま。はじめまして。
3月にもDinanに行ってきました。たった1泊でしたのでハープ博物館には立ち寄りませんでしたが宿泊したホテルはすぐそばでした。
日本の紫音ハープミュージアムの館長ともDinanのハープフェスティバルでご一緒しました。
このブログ内にはほかにもケルティックハープ関連エントリーがいくつかあります。
投稿: 市絛 三紗 | 2009.05.06 00:19