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2006.08.12

液体爆弾と海野十三

    次々と新しい手法で爆弾づくりにはげむテロリストたち。報道でも容疑者は爆発物として液体を使う予定だったと伝えられている。無色透明な粘液状のニトロメタンや、ゼリー状のニトログリセリンをカメラのフラッシュや携帯電話の電源で爆発させる仕組みのようである。ペットボトルを加工して二重底にしてあったので、中身を飲んでみせることも可能だったとか。なんだかスパイ映画、007でも見ているようである。

  「液体爆弾」という単語を検索にかけてみた。すると海野十三(うんの じゅうぞう、またはじゅうざ)さんの名前が出てきたので驚いた。海野さんは昭和初期にSFや探偵小説を書いた作家であり、日本のSFの先駆者と称されている人なのだ。「今昔ばなし抱合兵団、金博士シリーズ・4」(昭和16年8月に発表)に「液体爆弾」の記述がある。この時代に書かれた「液体爆弾」とはどのようなものなのか、興味津々で読みはじめた。

なにがさて、例の金博士(きんはかせ)の存在は、現代に於ける最大奇蹟だ。博士に頼みこむと、どんなむつかしそうに見える科学でも技術でも、解決しないものは一つもない。雲を呼んでくれと博士にいえば、博士はそこに並んでいる壜(びん)の栓(せん)を片端(かたはし)から抜く。抜けば、壜の中よりは、濛々(もうもう)たる怪しき白い霧、赤い霧、青い霧、そのほかいろいろが、竜巻(たつまき)のような形であらわれ、ゆらゆらと揺(ゆ)れているのを面白がっている間に、いつしか部屋の中は一面の霧の海と化(か)してしまって、そのうちに博士がどこにいるやら、実験台がどこにあるやら、はては自分の蟇口(がまぐち)がどこにあるやら、皆目(かいもく)分らなくなってしまうというようなわけで、結局金博士の智慧を験(た)めそうとした奴の蟇口の中身が空虚(から)と相成(あいな)って、思いもかけぬ深刻(しんこく)な負けに終るのが不動の慣例だった。

  この続きに興味のある方は青空文庫発表年順からどうぞ。

  話を現代に戻すが、94年12月にマニラ発セブ島経由成田行きフィリピン航空機内で日本人7人が死傷した事故があった。それ以後、空港では液体の持ち込みが制限されるようになったのだという。このとき用いられた爆弾はコンタクトレンズの容器に隠して機内に持ち込まれたニトログリセリンが主原料だった。アメリカ同時多発テロ事件が2001年9月11日に起きてからはさらに持ち込み検査が強化された。

国内では04年11月から「液体物検査装置」を導入した。ペットボトルやアルミ缶を装置の上に置くと、水やお茶などの飲料水以外の爆発物が混入している場合に赤いランプがともり、異常を示して持ち込みを防ぐ。すでに国内の主要空港には設置済みだ。毎日新聞 

  自分でこのような装置を見た覚えがないので、どのようなものなのか調べてみた。すると置くだけでペットボトルやアルミボトル内の可燃性液体を簡単にチェックできる「ボトル内液体物検査装置」を東京ガスが開発し、国内の空港に導入している。この検査装置は2005東京発明展、バーチャル展示会で関東経済産業局長奨励賞を受賞したこともわかった。

  ヨーロッパは節水している状態なので、海野十三さんの小説のように雲を呼んでくれたらありがたい。だが「液体爆弾」は空想の中だけで十分だ。

          追加情報

  世界で初めて発売された液体物検査装置、「ボトル内液体物検査装置、SLC-215D」がどのような過程をへて開発されたのかが紹介されている。製品の概要、特徴 試作品、開発の過程

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