そで振り合うも多生の縁
今日レユニオン島に住む日本人女性から電話があった。レユニオン島はフランスの海外県であるものの、インド洋の真ん中にある。本土からははるかに離れたフランスなのだ。
この家族とは7月にスペインから戻る途中、モンパルナス駅でたまたま話をした。その時は名前も言わず別れたのだが、縁があって連絡してくれたのだ。それは先月ナントでヴァンデ戦争の講演会前に昼食を食べていた時のことだった。
ひとりの女性がそばにきて「義理の妹は日本人でレユニオン島に長年住んでいるのよ」と話しかけてきたのだ。レユニオン島にいる日本人といっても何人もいるだろう。だが、私は思わずその人の手を握り「知っています。今年の夏、パリで会いました」と口走った。娘さんがいること、そして日本から家族が遊びに来ていたことを話すと、「そうよ。間違いないわ」と言う。お互いに思いがけない展開に驚くばかり。
電話の向こうから「あれからもあなたのことを話していたのよ。どうなったのか心配で。ヴァンデ戦争の集まりに参加しているとはねえ」と声がきこえ胸がいっぱいになった。私はモンパルナス駅でこのご家族と別れてからブルターニュに向かう列車の発車時間までのんびりマフィンを食べながら紅茶を飲んでいた。その時急に荷物のひとつがないことに気づき、盗まれたのではとパニックに陥った。何しろそこには家の鍵もパソコンもはいっていたのだから・・・頭に血がのぼり、どうしたらいいのかわからない。
駅の構内で日本人女性と偶然再会した時には混乱しきっていた。それから冷静に考えると、シャルルドゴール空港から駅まで乗ったエールフランスバスの中に自分が置き忘れたのだとわかった。スペインでフランス語も英語も通じず、身振り手振りの会話の連続。やっとフランスに戻ったので気がゆるみ、とんでもない失敗をしたわけだ。それがわかると緊張の糸が切れて体中の力が抜けた。とりあえず警察に行き事情も説明したが、バス会社の電話番号がわからないのでバス停で説明するようにいわれた。
駅内を走り回って興奮している私に「荷物を忘れただけじゃないか。死ぬわけじゃないよ。落ち着いて」と声をかけてくれたバス会社の乗務員の優しさ。でも肝心のバスはすでにオルリー空港にむけて発車しており、それがそのバスの終点だった。乗務員はあちこちに電話をかけ、後発のオルリー空港行きのバスに無料で乗車させてくれた。空港に着くとすぐに荷物を責任者の人が手渡してくれ、別のバスでパリ市内まで送ってくれた。自分でしたことがあまりに恥ずかしくてこれまで書けなかったのだが、この好意は決して忘れない。フランスはいい国だ!
しかし夜遅くなったのでブルターニュに戻る列車はもうない。パリ市内のかび臭いうらぶれた安宿で一夜をあかし、革命記念日のパレードも見ずレンヌにもどった。7月14日だった。その日の夕方にはDinanディナンで開催中のRencontres Internationales de Harpe celtique国際ケルティックハープフェスティバルに足を運んだ。紫音ハープミュージアムの館長とお会いする約束だったからだ。こちらはハープが取り持つ縁だった。
先日海辺でひとりのサーファーを見つけた。私も以前サーフィンをしていたことがあるのでつい懐かしくなった。そこで声をかけて写真を撮った。そのまま別れて海辺を散歩していたのだが、彼は私の帰りを待っていてくれた。「そで振り合うも多生の縁」、いったい彼とはどんな因縁があるのやら。
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コメント
大変でしたね。フランスの「かび臭いうらぶれた宿」
それはフランスの素顔なのでは。。。
華やかな寺院やベルサイユ宮殿は「市民」の重税によって
出来たもの。
日本にも昭和40年代には「ベットハウス」なる一泊100円~150円の宿がありました。シャワーも無い、ただ寝るだけの宿。。。
日本もそう言った時代を凄し、今があります。
逆にフランスの素顔を見れた事は
不幸中にも得た「収穫」かも知れませんね(^-^)
投稿: うーさん | 2006.12.04 00:23
こんばんは
空いていただけラッキー。一番混む日ですからね。いちおうここも星のついたホテルでした。はっきりした値段は忘れましたが35ユーロくらいしましたよ。
フランスでは2つ星ホテルで蚤がついてきて、自宅で増えたという悲しい出来事もありました。友人は「パリの4つ星ホテルよりレンヌの2つ星のほうが広くてきれい」と言っていました。本当にあたりはずれがあります。
今年ロンドンで泊まった2つ星ホテルは生涯で泊まったうち一番狭い部屋でした。中二階の物置部屋?みたいなところ。それでもシャワー、トイレ共同で7000円くらい!!
今年はシャトーホテルの豪華スイートから物置部屋みたいなところまで、いろんなホテルに泊まりました。
>「ベットハウス」なる一泊100円~150円の宿
これはさすがに知りませんが数年前大阪で2000円の宿に泊まりましたよ。シャワー、トイレ共同。簡易ベットなのに羽布団つきでした。
投稿: 市絛 三紗 | 2006.12.04 03:08
サーファーさん、素敵ですねぇ。
昔、映画「グラン・ブルー」で主演した頃のジャン・マルク・バールに似た感じで。
私、映画を見た後、しばらく彼に恋焦がれておりました・・・。
縁って不思議なものですね。
これからどんなことがあるのでしょうか。
投稿: マリ | 2006.12.04 04:43
書き忘れました。
上のコメントは、フランスに近いイギリスの島のマリです。
投稿: マリ | 2006.12.04 04:45
>縁って不思議なものですね。
マリさんも、うーさんも、もしかすると前世からのお付き合いかもしれませんよ。これからもよろしく!
レユニオン島にお住まいの女性はとても穏やかで、まるで観音様のようでした。あんな形でお別れしたのは残念だと思っていたのです。名前も知らなかったのに、こうしてもう一度話ができてうれしくてたまりません。
エールフランスバスでお世話になった方々は私のミスなのに「困っているんだから運賃はいらない」と言ってくれました。みんな笑顔で・・・心のこもった対応でした。
投稿: 市絛 三紗 | 2006.12.04 05:56