ブルターニュの教会 連続破壊事件
Ils avaient mis le feu à la chapelle de Loqueffret Brest.maville.com
ブルターニュの南西部、Cornouaille コルヌワイユで2007年に教会の連続破壊事件が起きた。5月から6月にかけて上の地図にある教会、カルヴェール(石のキリスト磔刑像)、泉などが被害にあったのだ。犯行が続くなか、奇妙な共通点がうかびあがってきた。現場に« TABM »と書かれていたのだ。この頭文字は« True armorik black metal »の略ではないかと考えられた。
そして6月16日の朝、Loqueffretにあるla chapelle de la Croixが放火され全焼してしまったことを耳にした人々は怒りと憤り、そして悲しみがこみあげてくるのをおさえることはできなかった。この礼拝堂は14世紀にたてられたもので1924年から歴史遺産に指定されていた。そこにはビン入りのメッセージが残されていた。
「我々True armorik black metalは過激主義のセクトである。(中略)我々のArmoriqueの土地(ブルターニュのこと)から我らがケルトの根源を尊重しない侵入者を追い払う必要がある」といった内容のものだった。
後に逮捕された22~28歳の若者4人のうち3人は 反キリスト教のblack métal ブラック・メタルの音楽グループ« Méandras »を結成していた。Quimper カンペールのle tribunal correctionnel 軽犯罪裁判所で裁判が進行中で判決は3月26日に下される予定だ。
ブラックメタル(英: Black metal) Wikipediaより抜粋 ヘヴィメタルのサブジャンルの一つ。速いテンポのドラムに、金切り声のようなボーカル、音を高めにゆがめたギターでのトレモロのピッキングなどを特徴とする。歌詞の内容には、サタニズム及び黒魔術への傾倒を特徴とする、反キリストを強く打ち出したものが多く含まれており、ブラックメタルバンドの中には、ペイガニズムやナチズムを掲げるものも多い。元はノルウェーを中心とした、スカンディナヴィア地方が本場だったが、現在ではフランスやウクライナをはじめ、ヨーロッパ、南米、北米、東アジア、東南アジア、オーストラリアなど世界各地のアンダーグラウンドでシーンが築かれている。
長らく人の知るところではなかった、この路線を継承したバンドが俄に注目を浴び、ブラックメタルの名が広まるに至ったのは、ノルウェーの反キリスト教集団「インナーサークル」(Inner Circle) の存在が大きい。彼らは教会への放火、十字架の破壊、殺人、窃盗、自殺などと数々の事件を起こした。アンダーグラウンド主義の元、メジャー音楽に攻撃をしかけるまでにもなり、ツアー中のアーティストの家を放火・ツアーバスを転倒させる、等の行動も起こした彼らは、ブラックメタルマフィアとも呼ばれた。
ブラックメタルで言うサタニズムとは、キリスト教の倫理の逆を行く事、すなわち自分の欲望に忠実に生き、弱者を強者の糧にするのをよしとする思想を表している。そのため、キリスト教を弱者のものとして否定したフリードリヒ・ニーチェの思想(ニヒリズム)が好まれる傾向にある。また、サタニズムは弱者の排除という点でナチズムと共通するが、Varg Vikernes のようなネオナチ活動家や、ナショナル・ソーシャリスティック・ブラックメタル(民族社会主義ブラックメタルの意)と呼ばれている Absurd、Graveland、Nokturnal Mortum のようなネオナチバンドを除いては、ブラックメタルのシーンで人種差別が肯定的に捉えられることはない。
Indignations 「憤慨」という名前のブログ、07年5月を見ると、キリスト教会に対する一連の事件が写真入りで載っている。新聞報道されているのは教会などの建造物だけだが、ブログを読むと墓もずいぶん荒らされている。本当にこれは「憤慨」としか表しようがない。しかもこれらはフランス全土に及んでいる。毎日のようにどこかで事件が起きているのだ。
中には私が訪れた場所もあった。たとえばUne chapelle encore vandalisée en Maine et Loireは森の中にひっそりとたたずむ小さなシャぺル。定期的にミサが行われているわけではないから、熱心な信者しか行かないような場所にある。どうしてここが被害にあうのかと問いたくなる。
ブルターニュのキリスト教にはケルトの要素が内在すると言われているが、上記のような破壊行為にケルトとのかかわりを見出すのは悲しいことだ。ブラックメタルとネオドルイディスムとは全く異なるものであることを、ここではっきりさせておきたい。
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