ブルターニュの農業と地下水汚染
農業と地下水汚染 代替水の費用支払え 給水公社に痛い判決
不慣れな町の喧騒に恐れをなして牛たちが、「モー」と一晩中鳴く。五月二十日夜のことだった。翌日から五日間開かれる「町の農場」と名付けられたイベント用に、静かな農場から連れてこられた牛たちだ。レンヌ市役所前広場はその数日前からブルドーザーが忙しく動き回っていた。おびただしい土や草木が運ばれてきて、見事な”農場”が完成した。オペラ座の前は牧草地に様変わりし、巨大なトラクターまで置かれている。その前のプラカードには、農家が環境を守り、安全な食品を生産するため、いかに努力しているかが、書かれていた。実際に農業に携わっている男性が「飼料用のトウモロコシはたっぷり肥料をやれば、よく育つんだが、制限しているんだ」と説明してくれた。
ブルターニュ地方には山がない。傾斜の緩かな大地が豊かな自然の恵みを提供してくれるのだ。ところが、農業生産をあげるために使用されている肥料が分解されてできた硝酸塩や農薬、除草剤が地下水を汚染し、川や海に流れ込んでいることが、近年指摘され始めた。
一九六〇年代、アメリカ各地で地下水が硝酸塩に汚染されていることが判明し、「飲料水一リットル当たり十ミリグラム以下」という水質基準が決定された。この硝酸塩が血液中にはいると、「ヘモグロビン血症」という病気にかかるのだが、活性炭や煮沸、沈殿ろ過などでは、取り除けない物質なのである。
一方ブルターニュでは九十年代初めに、フランス政府が「農業起原汚染制御計画」を始動させ、財政資金を注ぎ込んで畜舎改善、糞尿処理施設建設などの汚染防止に取り組んできた。
私は昨年、レンヌ市役所主催の「いかに水源を守るか」という説明会に参加した。二軒の農家を訪ね、低農薬・低肥料の実践状況を見学した。畑の周囲には土手がめぐらされ、汚水が直接地下水に染み込まないよう、細心の注意がはらわれていた。それでも地域全体で考えると、現状は計画どおりには進んでいないようだ。
五月九日、レンヌ裁判所で驚くような判決がでた。コート・ダルモール県に住むデニス・ボリエさんは、水道水は人体に有害だとして飲料用にミネラルウォーターを購入し続けているのだが、その購入代金を同地域の給水公社に請求していた。そして彼は昨年の一審敗訴後も闘争を続け、ついに勝利を手にしたのだ。
同裁判所は、一日当たり一人二リットルのミネラルウォーターの購入を認め、七千五百五〇ユーロ(約百三万円)を支払うよう同公社に命じた。デニスさんの自宅に給水が開始された日から八年間分の購入代金に相当する。水質基準では、硝酸塩は一リットル当たり五十ミリグラムを上限としているが、同公社の給水水質はこの規定を満たしていなかった、と認定された。
この判例は今後のほかの同様の裁判にも影響を与えることが予想されている。「もし八千五百人の水道加入者すべてが同様の権利を主張すれば、水道料金を八十倍にしないと、やっていけない」と同公社の代表者は頭を抱えている。すでに別の加入者が裁判を起こしていて、その判決は今月二十四日に言い渡される。結果はどうあれ、環境との取り組みを地球規模で考えなければ、この地下水汚染問題は解決しないだろう。 徳島新聞
これは私が書いた2003.06.03付けの新聞記事。腐敗した大量の藻と集約農業の参考に引用した。
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