「ぶるぶるぶる ブルターニュ大好き」を読んで感じたこと
フランス、特にパリについて書かれた本は多いがブルターニュの本となると必死で探さないとお目にはかかれない。そんな貴重な本が「ぶるぶるぶる ブルターニュ大好き―森と海の国」だ。
「ブルターニュ大好き」と言っていただきうれしいが、いくつか疑問を感じる記述がある。まず前書きに「さらに、ここが凄い。家庭でケルト語で暮らしている人口が今も50万人に達する」とある。そうであればいいのだが、そんなにブレイス語は話されていない。NHK テレビでフランス語 La langue bretonneにいきさつは書いておいたが、現実には復興運動を続けてやっと20万人といったところだ。
では第1章にはいりたい。ナントに残る15世紀のブルターニュ公爵の館とはどこを指すのかわからない。歴代の公爵は現在の城が建っている場所で暮らしていたはずだが・・・ルイ12世とアンヌが結婚式をあげた礼拝堂も今は残っていない。ブルターニュ再統一の意義も参照してほしい。
サン・タンヌについてはアンナ信仰、Saint Anne サン・タンヌのパルドン祭でも説明しているが、ブルターニュの守護聖人としてあがめられ非常に愛されている。ブルターニュにはアンヌはブルターニュで生まれ結婚していたが天使がガリラヤにその身体を運び、その後再婚してイエス・キリストの母、マリアをさずかったという伝説がある。さらに余生はブルターニュに戻り貧者を助けて生涯を終えたというものだ。アンヌをたずねイエス・キリストもブルターニュに来たという。
第二章のレンヌの記述だが、アンヌが婚約式をあげた礼拝堂はもう残っていない。またブルターニュにはles Enclos Paroissiaux とよばれる特殊な教会がある。中でも有名な3か所がSt-Thégonnec サン・テゴネック、Guimiliau ギミリオー、Lampaul-Guimiliau ランポール・ギミリオーだ。篠沢さんはGuimiliau ギミリオーの「ギ」は「聖」の意味らしいと書いているがこれはブレイス語のGwic (フランス語のbourg、集落や村) とSaint Miliau 聖ミリオーをくっつけたものでここでは聖なるという意味はないだろう。
Douarnenez ドアルヌネにはトリスタン島があるが、トリスタンと白い手のイズーが暮らした城は内陸部のCarhaix カレにあったようだ。
また地図はできればフランス語表記も付け加えてもらいたかった。篠沢さんご本人も書いているようにブルターニュの地名や人名にはブレイス語も多いので、この本を読んで旅をしようとしても綴りがわからなければ検索できないからだ。引き合いにだされているBretagne (Michelin Green Guides)は中身がアルファベット順に並んでいるので綴りが重要になるからだ。
<関連書籍>
●ブルターニュの基礎知識は田辺保さんの著書で!
ブルターニュへの旅―フランス文化の基層を求めて (朝日選書)
フランス 巡礼の旅 (朝日選書)
ケルトの森・ブロセリアンド
●「ケルト」についてはその概念じたいがあいまいなので、原聖さんの著書がおすすめ。
ケルトの水脈 (興亡の世界史)
<民族起源>の精神史―ブルターニュとフランス近代 (世界歴史選書)
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