Le Monde ル・モンド紙を買収した3人の男たち
今年1月、アメリカの日刊紙、廃刊相次ぐと書いたが、いよいよ新聞各紙は生き残りをかけて熾烈な戦いをよぎなくされている。今月はじめ、フランスを代表するLe Monde ル・モンド紙がついに身売りすることを発表。このニュースは世界に大きな波紋を広げた。
1944年Hubert Beuve-Méry ウーベール・ブーブメリー氏によって創刊されたル・モンド紙は、ここ数年来、苦しい経営を続けていた。2004年に外部からの増資を受け入れると2005年11月、活字とイラストだけだった従来の編集方針を転換した。写真を紙面に大きく載せ発行部数の拡大を目指した。さらに翌年電子新聞サービスも開始したのだが、状況は改善することはなかった。
フランス新聞事情に書いたように、一般大衆は無料タブロイド紙とテレビさえあれば満足で、有料新聞を購入しなくなっていたからだ。次々とジャーナリストたちは解雇され、転職をよぎなくされている。
Le Monde ル・モンド紙の売却先としては国内のいくつかの企業やロシアの富豪などが名乗りをあげていた。またサルコジ大統領がベルジェ氏をきらって横やりを入れたにもかかわらず、左派系実業家グループ3人が買収することとなった。「報道の自由への干渉」をかろうじて阻止したことになる。その3人とは通信会社Free創業者Xavier Niel グザビエ・ニエル氏、 「イヴ・サンローラン」のパトロンとして知られるPierre Berge ピエール・ベルジェ氏、投資家のMatthieu Pigasse マティウ・ピガス氏である。
彼らはル・モンド紙の編集者やジャーナリスト労組に対し、編集権の完全維持と重大な経営決定に対する拒否権を約束したというからひとまずは安心だ。おのおのの顔写真はル・モンド紙の売却先決定にのっている。サルコジ大統領は新型印刷機の購入費の融資をちらつかせて実業家グループを排除しようとしたと伝えられるが、そんな横暴はジャーナリストの誇りにかけて許されるものではない。
【パリの屋根の下で】山口昌子 ルモンド紙、抵抗精神の終焉 産経ニュース 2010.06.16
仏ルモンド紙、左派系実業家らに売却へ 日本経済新聞 2010.06.29
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