本の国の王になった男
パソコンのキーをたたけば、世界中の本のページをめくることが出来るような時代になった。それでも実際に手に取ったときの重みは格別だ。それぞれの本にははてしない宇宙がつまっていて、活字やイラストは未知の世界にいざなってくれるかけがえのない道案内となる。
私は子供のころ、大人になったらファンタジー作家か古本屋のオーナーになりたいと思っていた。その夢はまだ実現してはいないのだが、幸いにも好きな本に囲まれてはいる。我が家に泊まったブルターニュのジャーナリスト仲間は「こんな本見たことがない」とブルターニュ関連の本を何冊も引っ張り出して読みふけっていた。
本の国の王様はイングランドとウェールズの境にあるHay-on-Wye ヘイ・オン・ワイに実在するリチャード・ブース王のこと。1977年に独立とEEC脱退を宣言した。この時「リチャード書籍王」が誕生したわけだ。そして取材に訪れたジャーナリスト兼高かおるさんが公爵に任命されたのがテレビ放送されてから、爵位を求めて日本人観光客が激増。公爵や子爵になった人もいるらしい。すっかり有名になったヘイ・オン・ワイは大資本がスポンサーに就きフェスティバルを開催しており、書籍愛好家がこぞって訪れるそうだ。
この本の中にブルターニュの本の町、Bécherel ベシュレルの記述がある。ヘイ・オン・ワイが独立したのを記念してベシュレルに英国専門の「国王陛下の書店」をつくったがイギリス領事館からクレームがついたというものだ。
1962年に古本屋を開店し、世界初の古書の町をつくりあげたリチャード・ブース王。1998年には住民たちの推挙で「世界中の古書の町の皇帝」にも選ばれた。その後リチャード皇帝は行政との対立などで2005年に本屋を売却しドイツに移住したそうだ。それを知ってしまうと少々寂しい。これで締めくくろうとしたのだがさらに検索してみると、2009年にヘイ・オン・ワイに本屋を再開したようでカフェも併設されている。やはり戻ってきたのだ!王様ではなくなったとしても本があればきっとそれが幸せなのだろう。
Richard Booth's Bookshop
44 Lion Street,
Hay-on-Wye, Hereford, HR3 5AA
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