無印良品BGM写真展 「島のケルト 音と風光」
無印良品有楽町2FのATELIER MUJIで2013年4月26日(金)-6月9日(日)まで「島のケルト 音と風光 アイルランド、スコットランド、コーンウォール、ブルターニュ」という写真展が開催されています。無印良品では独自の店内音楽を制作しており、今年はフランス・ブルターニュ地方に伝わるケルト音楽がテーマだというのです。
私は車を運転しながら毎日ブルターニュの音楽を聴いていますので、ひとつひとつの音が身体にしみこんでいます。それは断崖をふきわたる風の音のようであったり、海鳥の鳴き声のようにも思えます。私にとってはかかせない貴重なひとときです。
開催期間中には鶴岡真弓さんのトークイベント「ケルト文化と音楽の精霊」なども予定されいているそうですから、お近くの方はどうぞお出かけください。
無印良品BGM写真展「島のケルト 音と風光 アイルランド、スコットランド、コーンウォール、ブルターニュ」
島のケルト―――西風が奏でる「再生の時」――― 鶴岡真弓 多摩美術大学教授/芸術人類学研究所所長・美術文明史家
馬車さえ満足にない19世紀、ドイツの詩人ハイネやフランス人の作家スタンダールは、ヨーロッパの西のエッジ、ブルターニュに旅をした。巨石の立ちつくす荒野や、未知の言葉に魅せられ、その衝撃を作品にしるした。時代に新しき目覚めをもたらすヘルメスであったこの2人の行き先が、「島のケルト世界」だったことは、もちろん偶然ではなかった。
ヨーロッパ人の信仰の真ん中にある、キリスト教の神や聖人はありがたい。しかしその背後には、名もなき精霊たちが、いきいきと生き続けていることを彼らは知らされる。「たった一つの真実」の物語から飛び出て、「多層の世界」へ踏み込む勇気を授けられたのだ。
たとえば、誘惑のリンゴ、シードル酒に酔いしれ、全身に「西風」を受けながら、私たちもブルターニュの「地の果て(フィニステール)」の崖に立ってみよう。きっとその渦巻く風の音のなかに、綾(あや)なされた土地の言の葉や、跳躍する精霊たちの声が現れるだろう。陰が陽へ、死が再生へと変じるように、私たちの傷を包み、新しい耳と瞳を授けてくれるかもしれない。
そうして授けられた「聴覚の眼」と「視覚の耳」は、波頭の向こうにその来し方をとらえるだろう。アーサーが産声をあげたコーンウォール、馬の女神が今もギャロップするウェールズ、イゾルデが癒したアイルランド、そしてブリテン島の北のマン島、湖にドラゴンを抱くスコットランド。これら「島のケルト」の風は、大陸のケルト文明とともに紀元前から吹いていた。
「風が時(代)の呪歌」を歌ってくれる。復興の詩人マクラウドはこう言った。「島のケルト世界」に、今ここから誘われる。再生の風の中にいるのは、それを聴き届けようとする、私たち自身なのである。
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