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2015.02.11

中東の友を想う

  フランスでは日本ではなかなか出会うチャンスのないような国の人々と知り合った。2005年の夏にはルーマニア人(男性)とシリア人3人(男性1人、女性2人)と一台の車で旅をしたこともある。この旅行のことは何回か書いているが、レンヌに住むセシルの家族がアルプスに山小屋を所有していたので1週間泊めてもらったのだ。国境をこえてスイスやイタリアにもドライブして、アルプスの夏を満喫した。

  シリアでは家族の結びつきが強く、客をとても大事にするのだという。たとえば手の込んだ美しい花瓶があったとしよう。その花瓶がどれほど高価なものであっても、ほめられたら花瓶はほめた相手に贈る。それが私のような風習を知らない外国人であっても同じだという。家に招きいれた時点で客であるから、大切な品でもおしみなく渡すのだ。持つものが持たないものを助けるのがイスラムの教えだからと説明してくれた。

  レンヌに戻ってもシリアの手料理を食べさせてもらったり、水タバコを体験したこともある。タバコは吸わないからとことわったのだが、「私もタバコは吸わないけれど、水タバコは別なの。イチゴとアップルどちらにする」と聞かれ驚いた。携帯用の小さな水パイプで吸ったアップル味のタバコは不思議な味がした。

  「ぜひシリアにいらっしゃい。母にももう会ったことがあるでしょう。うちには何日いてもいいわよ。ほかの都市に住む友達も紹介してあげるからアラビア語ができなくても平気よ」とさそってくれた。でもこの計画はお互いの都合があわず残念ながら実現しなかった。

  ジャーナリストクラブではイラン人の女性ジャーナリストとの懇親会にも参加した。ふんだんに薔薇のエッセンスがはいった料理やデザートがふるまわれ、食文化の違いを実感した。またイラン人の映画監督が作ったテレビ映画を見たこともある。彼は実際に兵士としてイラン・イラク戦争に従軍していた。「僕は敵だからといって人間に向けて銃を撃つことはできやしない。戦争が終わってこうやって生きていられるのは奇跡みたいなものだから、戦争が人々をどんなに苦しませてきたのかを映画で伝えたいんだ」と話してくれた。3人のイラン人と2人のイラク人も一緒に映画を見ていた。誰もが口をそろえて「争いはもうごめんだ」と言った。

  ISIL(イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」の別称)を攻撃するといっても、そんな国は地図上に存在しない。実際に爆弾が落ちるのはイラクやシリアの大地だ。イラク、モスルやシリア、ラッカ空爆後の映像では建物があったはずの場所にコンクリートが折り重なり瓦礫の山となっている。「助けてくれ。子供が生き埋めになっている」と大声で叫びながら素手で石を取り除く男性も映し出されていた。

  このビデオは昨年春にSaveTheChildrenが公開したもので、シリア人少女の1年間を凝縮したものだ。ひとたび争いが起こればそこで暮らしていた人々は先祖代々住み慣れた祖国を追いはらわれるように立ち去り難民となるしかない。彼らの立場からみれば爆弾を落とすものは、ISILであろうとなかろうと領土を侵す侵略者にほかならない。心に刻み込まれた恐怖や悲しみは癒えない。

  オードリー・ヘプバーンがユニセフの特別大使として飢餓で苦しむ子供たちを助けようとしたのは、彼女自身が子供時代に第2次世界大戦下で食べるものにも事欠きやせ細ってしまったというつらい体験をしていたからだ。

  その人がどこで生まれようと、どのような宗教を信仰していようと、お互いを理解し尊重する気持ちが大事なのだと私はフランスで学んだ。一緒に旅したシリア人とはメールでやり取りをしていた。度々電話も通じないとぼやいていたが、いつの間にかメールもこなくなってしまった。中東のニュースを聞くたびに、みんなどうしているだろうかと思う。生きているのだろうか。怪我していないだろうか。家は空爆されていないだろうかと考える。

  中東のために我々がすべきことは何だろう。海外で医師として活動を続けてきた中村哲さんは海外支援についてインタビューでこう話している。

日本は、軍事力を用いない分野での貢献や援助を果たすべきなんです。現地で活動していると、力の虚しさ、というのがほんとうに身に沁みます。銃で押さえ込めば、銃で反撃されます。当たり前のことです。でも、ようやく流れ始めた用水路を、誰が破壊しますか。緑色に復活した農地に、誰が爆弾を撃ち込みたいと思いますか。「マガジン9」

  争いで傷ついた人々を治療し食料を届ける。子供たちには教育の援助をする。そして人々が故郷に戻ってこられるように荒廃した大地を耕し作物を植える。そんな支援を私はしたい。


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