1989年3月23日、アメリカのExxonエクソン社(現在はExxon Mobil Corporation)の自社タンカーExxon Valdezエクソン・バルディス号がアラスカ沖約20マイルの海域で座礁。11の貨物油タンクのうち8タンクと5のバラストタンクのうち3タンクが損傷を受けた。
この結果、積載していた原油約20万トンのうち約4万トンが船外に流れ出した。まずはじめに事故後の写真(google photo)を見てほしい。真っ黒なオイルに覆われて死を待つだけの鳥や海獣たち。そして今話題の「手つなぎラッコ」と同じようにしっかりと手をとりあって泳いでいるラッコの写真(Daily News file photo)がある。握った互いの手は命の絆。いきなり広がった黒い油膜になすすべもなくおびえるしかないのだから。
1400隻の船、85機のヘリコプターと1100人の作業員が懸命の作業を開始した。海鳥やラッコ、アザラシなどの海獣を救い、海岸に打ち上げられた油の塊を除去するのだ。ニュースを知りボランティアも応援にかけつける。それでも約2400キロに及ぶ海岸線が汚染されたのである。作業は容易ではない。ニシンや鮭などの魚が打ち上げられ、鳥たちが空から落ちてくる。そして海獣も次々と息絶えてゆく。
Exxon Valdezのこの事故は米国沿岸では過去に例をみないほどの環境汚染をもたらした。統計資料がないので正確にはわからないが、40万羽の鳥たち、ラッコは6000頭が死亡したと推測されている。
この事故を教訓として、1990年2月、国際海事機関(IMO)総会で「油による汚染に関わる準備、対応及び協力に関する国際条約」(OPRC条約)が採択された。
① 自国の船舶への油汚染緊急計画の備え付けの義務
② 自国の船舶による油の排出及び汚染の通報手続き
③ 油汚染報告を受けた際の措置
④ 油汚染に対する準備及び対応のための国家システム構築のための緊急時計画の策定
⑤ 油汚染対応における国際協力
⑥ 研究開発・技術協力
環境用語解説(広島商船高等専門学校)
また1992年には海洋汚染防止条約(MARPOL)が改正され、ダブル・ハル(二重船殻構造)が義務づけられた。この情報はエネルギー輸送に欠かせない大型タンカーに載っている。 JOGMEC NEWS 2006 09
事故から年月がたって海はいったいどうなったのだろう。共同通信に「環境汚染、予想以上の規模 89年米原油流出事故後」という記事があった。2003.12.19
1989年に米アラスカ沖で起きたタンカー、エクソン・バルディズ号の座礁による原油漏れ事故で、生態系への悪影響は、これまで考えられてきたよりもはるかに大きく長期間にわたるとの分析を、米ノースカロライナ大などの研究グループが19日付の米科学誌サイエンスに発表した。
グループのチャールズ・ピーターソン博士は「原油に含まれる有害成分は、ごく微量で魚の生息などに
悪影響を及ぼすことも分かった。新たな環境基準を設定し、原油の流出防止対策を強化する必要がある」
と指摘している。
グループは、大きな被害を受けたアラスカ北部海岸で行った調査に、他の研究機関や政府の研究結果を
加え、事故の影響を評価した。
この海域では事故直後に2800匹のラッコが死に、2000年になっても個体数に回復の兆候がない
ことが判明。カモなどの海鳥の死ぬ率も長期間にわたって高い状態が続いていた。(共同通信)
そのほか日本語で読める記事をいくつか載せておく。ぜひ目をとおしてほしい。
エクソン・バルディーズ号事故から15年、今なお続く偽りの歴史~グリーンピース、エクソンモービル社に要請書を提出~
エクソン・バルディーズ号事件
CYAO's notebook : true stories
石油メジャー「エクソン」ボイコットキャンペーンを開始=憂慮する科学者同盟はじめ12団体
このような悲しい事故は世界のあちこちで頻繁におきている。それらをまとめたブログがある。知床・油汚染海鳥漂着問題だ。日本野鳥の会オホーツク支部の人が書いているが、まとめて読むと、こんなにあるんだと改めて考えさせられる。海に囲まれている日本。エクソン・バルディス号の事故は決して他人事ではないことを心に刻んでおこう。
ラッコに関するリンク
ラッコ ってこ んな 生き物 なんで す!! 情報がよくまとまっている 悲しい歴史
北海道デジタル図鑑 100の物語 アザラシ・トド・ラッコの区別をわかりやすく解説 写真が美しい
日本ラッコ協会 Japan SeaOtter Association
らっこ!らっ こ!ラッコ! ラッコのいる日本の水族館リスト有り
ラッコの道標 鳥羽水族館のラッコ飼育記