フランスでは秋に新学期をむかえる。小学校はたいてい9月はじめからだ(学校によっては8月中旬から)。したがって8月になると文房具売り場は、かばんやノートなどを買い求める親子づれでひときわ賑やかになる。大学生が大学にもどってくるのは10月5日前後である。ほとんどの大学が国立なのだが、授業開始の日時も一律ではなく、9月中旬にはじまる大学もある。
レンヌの人口は約21万人。日本でいえば小都市だろうが、フランス国内では10番目に人口の多い大都市なのだ。特筆すべきはその年齢別比率である。2つの総合大学とその他高等教育機関で学ぶ学生が約6万人。幼稚園児から高校生までが4万6千人。じつに人口の半数以上が学生という驚くべき数字である。
これだけの若者たちが、いっせいに住宅探しをするのだから、慢性の住宅不足におちいっている。これという物件は友達どおしのネットワークで次の借り手が決まってゆくので、その残りの少ない物件をみんなが血眼で取り合うことになるからだ。そんな事情も知らない私がレンヌに着いたのは、数年前の9月半ばだった。ちょっと家賃を上乗せすれば物件はあるはずと考えていたのだが、そんなに甘いものではなかった。不動産屋も全く貸す物件がないのである。もし物件があったとすれば、親と一緒に来ているフランス人学生に貸そうと考えるのが普通だから、外国人というだけで不利なのはあたりまえなのだ。
念のため1週間ホテルを予約していたのだが、期間内に何も見つけられなかった。おまけに冷たい雨にぬれて風邪をひいてしまった。知り合いはもちろんいないし毎日うちひしがれてホテルに帰るしかなかった。ホテルの人も心配してあちこち知り合いに聞いてくれたりしたのだが、それでも見つからず、しかも滞在しているホテルもすでに予約がはいっていて、もう其処にはいられない。
「いったいどうしたらいいのだろう」と頭をかかえるだけだった。たまたま親切なフランス人と出会い、住宅探しを手助けしてもらうことが出来、ホテルのオーナーの好意で予約がはいっていたお客さんは別のホテルへ移ってもらうことができた。
そんなホテル暮らしも約1ヶ月が過ぎ、偶然今住んでいるところが見つかった。250年以上建った古い建物だが、内部は改装されているので、そんなに古びた感じはしない。バスタブもエレベーターもなく、文句をいえばきりがないが、それでも愛着があってずっと同じところに住んでいる。レンヌで暮すことを考えている人はこのような住宅事情を知ったうえで、覚悟してから来たほうがいいだろう。「住宅探しにそんなに苦労しなかった」という人もいるだろうが、その人はほんとうに運のいい人なのだと思う。
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